お寺の本堂や、ご自宅の仏壇には必ず三具足(みつぐそく)と呼ばれるものがあり、これは香、華、灯明をお供えするもので、花立て、香炉、燭台(しょくだい)という仏具のことです。
香炉以外のものが一対づつの場合は五具足(ごぐそく)と言います。
香や花を供えること、灯明を灯すことは香華灯明(こうけとうみょう)を供養するという言い方をし、仏様やご先祖様をはじめ、自身が志す霊位に対して供養する気持ちを供える大切なものです。
よくお参りをする時に、お線香は何本あげれば良いのかを聞かれることがありますが、香は焚くということに意味がありますので、本数はあまり関係がありませんが、大抵1〜3本くらいでしょう。
香の香りは自身の身を清めて心をしずめ、供養する場所である道場が清浄になり、そこにお迎えする仏様に良い香りをお供えすることなのです。
花はその美しさから、飾りとして荘厳の意味で供えますが、仏様に綺麗なものを供えるのも供養とされ、仏様の御心を満たす役割があります。
また仏様の御前において、私達がお参りをする姿も、たくさんの花を供えるのと同じことであると言われています。
自らも仏様を飾る花となっているということです。
灯明は、仏様の知恵の象徴で、その慈悲の光は暗闇を除き、迷いを払う道しるべなのであります。
また香華灯明は、私達の修行の姿にも例えられています。
香でいうなれば、火のついた線香が最後まで燃焼する様子から、私達も怠ることなく努力精進しなければいけないということを表しています。
綺麗な花は人の心を和ませ、穏やかな気持ちにさせることから、自身の心も柔和(にゅうわ)であることの大切さを示しています。
そして、生命力みなぎる花も、やがてしおれて枯れていきます。
その変わりゆく姿から、人の一生も無常であると自覚することを示しています。
灯明の光は、自我の欲に染まった煩悩の闇を除いて、私達の進むべき道筋を示し、明るく照らして下さるのです。
慈悲の光と温もりによって、私達が心から豊かになることが、灯明の意味するところなのであります。
いつも、何気なくお供えしていた方もおられるかもしれませんが、香華灯明にはそれぞれに大切な意味があり、私達にその心構えを示されています。
亡き人へ線香を手向ける時も、お墓に花を手向ける際にも、その深い意味を思い出し、供養と感謝の志を捧げていただければと思います。
これからも真心を込めて、香を焚き花を飾り、灯明に明かりを灯して下さい。
その時、仏様と心が結ばれることでしょう。合掌 |